赤ちゃんポストと300日
昨年12月、熊本市の慈恵病院は、赤ちゃんポストの設置を市に申請していた。赤ちゃんポストというのは、何らかの理由で子どもを育てることのできない親が、匿名で新生児を預けていくシステムのことだ。望まれずに誕生した赤ちゃんの命を守ること、妊娠中絶から胎児の命を守ることを目的としている。ドイツでは2000年の設置以降、20人以上の子どもの命が救われているそうだけど、日本では初めての試み。キリスト教の国、ドイツでも法的裏付けのされていないこのシステム。日本では当然のことながら賛否両論が持ち上がっていた。そして、その赤ちゃんポストの設置が、昨日(4月5日)許可された。
慈恵病院の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」の場合、病院の人目に付きにくいところに扉を付け、その中に保育器を設置するという。新生児が容器の中に入るとセンサーが反応して、24時間待機している医療従事者に知らされるという仕組みになるそうだ。確かに、このシステムで救われる命はあるだろう。でも、受け入れ対象は生後2週間までの新生児だという。それ以上の子が入れられていた場合はどうするつもりなんだろう? それに、一度扉を閉めたら外からは開けられないこの容器。そこに子どもを預けに来る人は、果たして、産んでから悩みに悩んだ末預けに来る人なんだろうか? おなかを痛めて産んだ我が子を、生後2週間以内に「育てられない」と結論づけられるような人は、おそらく産む前から既に「育てられない」と思っていたはず。だとすると、「中絶にも出産にもお金がかかるから、自宅で産み落として置きに行こう」なんて考えた人の方がより多く救われることにもなりかねない(たぶん、「それでも命を救えるなら……」という考えの下に設置されるのだろうけど)。更に、幼児虐待の末亡くなっていく命は、もう少し大きくなるまで生かされているわけだから、この方法では救えないはず。わたし個人としては、育てられないのがわかっていながら、無責任に親になって命を誕生させること自体がよくないことだと思っている。だから、赤ちゃんポストの匿名性に抵抗を感じてしまう。
また同時期に、民法における女性の再婚禁止規定(離婚後300日問題)が見直されるか否かという話が持ち上がっていた。「離婚後300日以内に産まれた子供は前夫の子と推定される」という民法の規定によって、間違いなく現在の夫の子である場合でも裁判を経なくては現在の夫の戸籍に入れることができない。でも、この法律は明治時代に作られたもので、DNA鑑定はもちろん、今のように早産で生まれた子供が無事育つことなども想定されていない。実際の妊娠期間だって300日未満なのだから、数日の差で泣いている女性もいるだろう。例えば、40週で産んでいれば300日規定に引っかからないで済んだのに、早産で産んでしまったからアウトという場合もあるはず。それなのに、長勢法務大臣は「性道徳や貞操義務」を理由に法改正を反対している。離婚後に妊娠したケースに限定して、医師の証明書を添付すればOKという例外の通達を出したけれど、DNA鑑定はやはり認めない方針のようだ。これから育っていく子どものことを考えたら、わたしは認めてあげて欲しいと思うのだけどね。
以前、このブログの中で「いのちのまつり―「ヌチヌグスージ」 」という絵本を紹介したことがある。たくさんのご先祖様から命を受け継いで、今の自分がいるのだということをおばあから教えられる男の子の話だった。実は今年に入ってから、その絵本の第2弾が発売になっている。だから、今日はその絵本を紹介しようと思う。「いのちのまつり つながってる! 」という絵本だ。小学生のミズちゃんが急いで家に帰ると、飼い犬が子犬をを生んでいた。おなかにはへその緒が付いている。そのことをきっかけに、へその緒がつないできた命の話を聞くことになる。前作のヌチヌグスージ同様、今回も大きな見開きページを使って、連綿と続いてきた命のつながりが表現されている。「せっかく自分の命を受け継いで生まれてきた命なのだから、箱の中に置き去りにする前に考えてみたら?」「誰の命を受け継いでいるのかが明らかならば、その親の戸籍に入れるのが当たり前なんじゃないかな?」などと語りかけてきそうな絵本だ。
望まれずに生まれてきた子供の命を救うシステムと望まれて生まれてきたのに戸籍に入ることのできないシステム。どちらにも賛否両論、様々な意見がある。何を基準に考えるかが人によって違うからだろう。でもわたしには、どちらも「お母さんのおなかに入った時点からひとつの命だ」ということ、「お父さんとお母さん両方の命を受け継いで誕生する命なのだ」ということを外して議論されているような気がしてならなかった。
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いのちのまつり―「ヌチヌグスージ」 著者:草場 一寿,平安座 資尚 |
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いのちのまつり つながってる! 著者:草場 一壽 |
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